【聴く】人の意見を否定しない
取材で心がけているのは、その人の意見を否定しないことです。
例えば、教育というジャンルには、いろんな主張をお持ちの方がいます。
英語を幼児から学ばせた方がいいと考える人もいれば、まずは日本語が大事で英語は中学校に入ってからで十分と考える人もいます。
果たしてどちらがいいのか、その答えはそう簡単に出ません。
「私はこう思う」という考えを持っていたとしても、それが国民レベルで正しいと言えるかどうかはわからないわけです。
対立するAさんとBさんがいるとして、私が両者に話を聴きに行ったことがあります。
どっちかといえばAさんの主張のほうが好みかな、ぐらいに思っていたとしても、Bさんとケンカにならないのは、Bさんが「どうしてそう考えるのか」に考えを集中させるからです。
相手を言い負かしに行くのではなく、話を聴きに行ってるんですからね。
自分の考えは横に置いておいて、フラットな気持ちで話を聴くわけです。
話をじっくり聴くと、「なるほどそういうことか」と納得し、Bさんの主張にも一理あると感じるものなんですよ。
ライターがどちらが正しいかを判定する必要もないし、どちらかの意見を否定することもしない、そういうスタンスが大事なのかなと思います。
どちらが世の中の役に立ったのか、それを判断するには長い年月が必要であり、その前に何らかのジャッジをするとしたらそれは世論であると思うんですよ。
これはプライベートでのコミュニケーションでも大事なことだと思います。
たまにいますよね。人の意見を一刀両断する人。
それが癖になっていて、本人は人を傷つけていることに気づかないんだと思うんですけどね。
私がある女性に「今、こういうことに興味があるんだ」と話したら、その女性から「そんなのどこがおもしろいの。全然よくない」と面と向かって言われたことがあります。こんないい方しなくてもなぁと思って、彼女とはしばらく会わなかったんです。しばらくぶりに用事があって会ったら、私が言ったものに、彼女のほうがはまっていたという…オチがつきました。
あまり興味がないとしても、頭から他者の意見を否定するのではなく、どうしてそう考えるか、そちらに目を向けることが重要なのではないでしょうか。
【話す】一方的に話し続けない
他者に自分の話を聴いてもらうには、コツがあります。
「一方的に話し続けない」ということです。
たまにいるんですよね。
ばーっとひたすら話し続ける人が。
でも、聞いている方は話についていけなくなって、途中でわけがわからなくなります。脳の容量オーバーという感じでしょうか。
こういう方の場合、例をあげて説明すればするほど、わけがわからなくなりがちです。もちろん、ご本人はわかりやすく言ってるつもりなんですけどね。
目の前の相手の反応を見ましょう。
疑問のありそうな「?」な顔をしていないでしょうか。
そういうときは区切りのいいところで話を中断して、何がわからないのか、言ってもらったほうがいいと思います。
ときには自分から質問します。
「どう思います?」と。
別に答えを期待しなくていいのです。休憩のつもりで。
講演会で話しているわけではないのですから、しゃべり続けなくていいんですよ。
相手に圧迫感を与えてしまうだけです。
相手との会話を楽しむ気持ちが大切だと私は思っています。
【取材術】山田拓朗選手、銅メダル!
リオのパラリンピック、50m自由形で山田拓朗選手が銅メダルを獲得しました。
おめでとうございます。
ちょうどライブで競技とご本人のインタビューを見まして、非常に感慨深いものがありました。
なぜかといいますと、私は彼がまだ中学生だった頃、取材しているからです。
確かアテネのパラリンピックに出場が決定したときだったと記憶していますから、かれころ12年前でしょうか。
ある教育雑誌で「活躍している中学生を紹介する」という企画があり、彼の住む兵庫県の、練習しているプールで会ったのです。
当時はどんな様子だったかというと…「はい」とか「そうです」しか言わない、いわゆる普通の中学生の男の子でしたよ。
こちらが何を言っても表情の変化は乏しく、淡々としていました。
まぁ、いきなり初対面の、お母さんと同じ年齢ぐらいの大人と話をしなさいといわれても、うまく話せないでしょうからね。それはしかたのないことです。
それが今日はどうでしょう。
自分の意見をきちんと言う姿を見て、大人になったなぁとしみじみ思いました。
しかも、かなりのイケメンになっていました。
子どもの頃も十分、美少年風でしたけどね。
で、相手がほとんど話してくれない場合、どうやって取材するのかということですが…。
これはあくまでも私の場合ですが…。
そもそも私はその人に関する情報(過去の新聞や雑誌、ウェブの記事など)をある程度知っていて、取材に行くわけです。
ですから、それらの情報の中で使えそうなものを一つ一つ確認していくわけです。
このときはこんな感じだったんですか?
これはこういうことですか?
このときはこう感じたんですか?
などなど。
とにかく「はい」「いいえ」で答えてもらいます。本当はいろいろしゃべってほしいんですけど、それしか言ってくれないわけですからしょうがないですよね。
でも、そうやって話を進めていると、ボソッと今までにない新しい言葉やエピソードをを付け加えてくれたりすることがあります。新しいネタが少しでも入ればラッキーで、取材した価値があったということになります。