聴く、話す、書く コミュニケーション仕事術

聴く、話す、書くを仕事にしてきたライター林が、すぐに役立つコミュニケーション術を紹介します。

【話す】初対面の人と話すには最初が肝心

私が仕事でお会いするのは、ほとんどみな初対面の人です。

初対面の人が打ち解けてくれて、話しもらわなくてはいけません。

それには、最初が肝心です。

 

まず、こちらから笑顔であいさつ。名前を名乗ります。

相手がブスッとしていても無表情でも、こちらが先に笑顔を見せてしまいましょう。

笑顔を見せたからって、損しませんから大丈夫。

相手と力関係の駆け引きをする必要もなし。

笑顔にはこちらの手の内を見せて、相手を安心させる効果があります。

そうすると、ニコッとしてくれる人がほとんどです。

ニコッとしてくれたら、しめたもので、なごやかなムードの中で会話を始めることができます。

 

ごく少数ですが、こちらが笑顔で接しても、ずっと無表情の人もいます。

それは、その人自身の問題です。

別に、あなたのことが気に食わないから、嫌いだから無表情なのではなく、元々そういうキャラクターだと思えばOKです。きっと不器用な人なんですよ。

こちらは何事もなかったように、にこやかに用件を話します。

その人をどうにかしようなどと思わないで、ビジネスライクにどんどん話を進めるのです。

世の中にはわかり合える人とわかりあえない人がいて、わかり合えない人の心を開こうなどという無駄な努力をする必要はないですからね。

無表情でいられると、「怒ってるのかも」と不安になります。しかし、それがその人のコミュニケーションの仕方なんですよ。

あなたが傷つく必要はありません。

仕事であれば、さっさと用件を済ませて笑顔で退散しましょう。

プライベートならば、無理にコミュニケーションをとらなくてもね……。もっとフレンドリーに接してくれる人と話してみてください。

【話す】子ども向けワークショップでの話し方

昨日は、ある小学校で6年生が対象の企業とコラボレーションしたワークショップを見てきました。

企業の方が講師となって、最初に15分ほど講演をされていました。

子ども向けに、難しい話をわかりやすい言葉で話しておられたと思います。

話題のチョイスも良かったと思います。

子どもたちにとって、普段は知ることができないことだったので、興味深々で聞いていました。

 

ただ、導入の部分がちょっと残念かなと。

例えば、いきなり「トヨタの車に乗ったことがある人、手をあげて」のようなことをおっしゃったんです。

子どもたちはきょとーん。

例えば、愛知県豊田市であるとか、地元にトヨタの巨大な工場があって、市民のほとんどがトヨタ車に乗っているとか、そういう環境ならば、こういうアプローチの仕方でいいと思うんですよ。

でも、そうじゃない場合、「トヨタってなんだっけ」となります。

ちょっと唐突でしたね。

大人にとっては当たり前で誰でも知っていることも、子どもにとってはそうとは限りません。子どもの頭の中で、そのキーワードにたどりつくまでには、ワンクッション必要なことがあります。

 

こういう場合、まずは「車」から入っていかないと。

「道にはたくさん車が走っているよね?」とか。

今回は地方都市なので、車社会ではあることは確かです。

ただ、ここで「みんなの家には車があるよね?」は学校ではまずいわけです。

なぜかというと、学校にはいろんな環境の子どもが通っているからです。全員の家に車があるとは限りません……。

学校で話す際にはこのような、いろんな子どもへ配慮が必要になります。

 

今後ますます、学校では企業とのコラボレーションした授業が行われると思うんですが、企業さんにも子供向けに話す場合のルールを知っておいていただくと、両者にとってハッピーな時間になる気がします。

【書く】事実を伝える

私はエッセイスト、コラムニストではなく、取材をして情報を提供するために原稿を書いています。

ですから、大事なのは事実を伝えることです。

事実を読者にわかりやすく伝えるにはどんな構成にして、どんなふうに紹介すればいいのか、それを考えに考えて原稿を書いています。

 

例えば、あるイベントに取材に行ったとしたら、

・どんな主旨で、どんな背景があって

・対象は誰で、

・誰がどんなことを行っていて、

・参加者の反応はこうで

・ギャラリーの反応はこうで、

・このイベントにはこんな意味がありました

みたいなポイントを押さえて書くわけです。

でも、どの順番で紹介するか、どこをメインに紹介するか、それは書く人によって微妙に違ってきます。

 

だから、自分の個性を出そうとか、そんなことは考えていません。

個性を主張する必要はないからです。

結局、事実の伝え方の中に、個性は醸し出されるものだと思うんですよ。

【聴く】表情を豊かにする

初対面の社会人と話したときに思うのは、無表情な人が多いということです。

初対面の時は本当にみなさん、無表情ですね。

まるで怒っているみたいに見えます。

不思議なことに、次に会うと、ニコニコあいさつしてくださったりするんですけど。

 

私は、初対面の人に話を聴くのが仕事なので、二回目はないのです。

一回目でも心を開いてもらって、ノリノリで話していただくには、聴く側が、表情を豊かにする必要があると思います。

もちろん、相手をバカにしたり、見下したり、そういうマイナスの感情を外に出してはダメですよ。

こちらは仕事で話を聴きに行っているんですから、相手に気分よくなってもらって、いろいろとたくさん話してもらわなければいけないわけです。

 

もしも自分が話す立場だったら……無表情の相手に向かって話をするのは嫌ですよ。

無反応では、その話がおもしろいのか、おもしろくないのかわからないじゃないですか。

ものすごく仏頂面で、怒ったような表情で、自分の話したいことしか話さない人も確かにいます。

でも、こういう人は一握りで、多くの人はサービス精神をお持ちです。相手のニーズにこたえたいし、満足感を与えようとしてくれるものなのです。

別に、話がつまらないのにおもしろいふりをする必要はないと思いますが、おもしろいときは「おもしろい!」とわかりやすく表情に出したほうがいいと私は思っています。

そうすると、相手は乗ってきて、どんどんしゃべってくれるからです。

 

話が込み入っていて、ちょっとわかりにくいなと思ったとき、本当はわかっていないのにわかってるふりをする人が多いのではないでしょうか。私も若いころはそうでした。「よくわかりません」などと言ったら、中身がないことがばれてしまうと思っていたからです……。

今では、話がよくわからないな、と思った時はちょっと眉間にしわを寄せることにしています。そうすると、相手はちゃんとこのサインを読み取って、わかりやすく説明してくれるものなんです。

 

もう少し説明してほしいなというとき、私がよくやるのは、相手の言葉を反復することです。

たとえば、

相手「大事なのは、人を信じることです」

私「信じること、ですか」

という感じです。

 

感心したときは感心した顔。

納得したときは納得した顔。

驚いたときは驚いた顔。

 

無表情の方は、「感情を動かすと負け」とでも思っているんでしょうか?

そんなかけひきはいらないと思いますよ。

表情豊かに反応することは、負けじゃありませんから。

むしろ、好印象を持ってもらえて、いろんな話をしてもらえて、結果的に「勝ち」です。

 

【聴く】自分の癖を修正する

昔々、ある編集者の女性に言われました。

「林さん、話を聴く時びっくりしすぎだよ。それじゃ相手はバカにされてると思うんじゃないかな」と。

当時の私は意外な話を聴いたとき、高いテンションで「はっ!?」などと言っていたのです。

私は深く反省しました。

リアクションは大事ですが、もう少しテンションを下げて、「そうなんですかー」というような驚き方をすることにしました。

 

私の周りでも、おもしろい癖を持っている人がいます。

私の、そんなに親しくもないある女友達は、人から自分の知らない話を聴いたとき、ぽかんと口を開けてフリーズします。眉間に少々しわが寄り、変なことを聞いてしまった……どうしようみたいな表情になります。

これはまさに、バカにしてんのか、という反応ですよね。話をする気が失せます。

 

それから、「あの本、おもしろそうですよね」とか、世間話のレベルで、自分が同意できない話をされたとき、目をそらし、沈黙し、なかったことにする男性編集者がいます。気まずい空気を自らつくりだすんです。「へぇ、そうなんですか」と一言言えば済むのに……。この方には、こういう反応をされたことが何度かあり、この人には余計なことは言わないでおこうと思っています。

 

自分の癖ってわからないものです。

もしも人が言ってくれたときは素直に修正しないとね。

【聴く】口角を上げる

学生時代の友達に会うと、「昔はとんがってたね」と言われます…。

さぞなまいきな女子大生だったんでしょう。

田舎から東京にでてきたせいもあり、田舎者だとバレないようにしなきゃ、バカにされないようにしなくちゃ、というのがありましたからね。

 

ライター業を始めてからは、インタビューの相手はみんな年上です。なめられないようにしなきゃ、無知がばれないようにしなきゃと思っていました。

当然、ニコニコする余裕はありません。知的な顔をしなきゃと思っていたのです。

 

ところが今は、「楽しそう」だといわれます。電車の中で本を読んでいたら、「あなたみたいに楽しそうに本を読んでいる人を初めてみた」と言われたことがあります。

なぜそう見えるのかというと、口角を上げるのが私のノーマルポジションになっているからだと思われます。

 

普通、何も考えていないとき、多くの人の口角は下がっています。本人にとっては無表情のつもりでも、「怒っているように」見えてしまうことがあります。

私が口角を上げるようになったのは、加齢とともに頬の肉が下がるのを防ぐためなんですけど、結果として楽しそうな雰囲気に見えているわけですね。

 

人から話を聴く時、大事なのは「安心感を与えること」だと私は思います。

「この人には安心して話せる」と思ってもらわないと、相手は心を開いてくれないからです。

それには聴く側の表情が大事です。

常に口角を上げて、微笑むことでその場が和みます。大人になってこれができるようになりました。

 

人間の気持ちは、表情を変えると変わるんだそうです。

口角を上げていると、なんとなく楽しい気分になりますよ。これは私だけの話ではありません。ぜひお試しください。

【聴く】頭を使いながら聴く

頭を使いながら話を聴く、これが結構難しいことなのです。

若いころはできませんでした。

話を聴いているふりをしながら、実は、次にどの質問をしようかと必死に考えていました。

もちろん、質問項目は事前に決めていっているんですけど、どのタイミングで新しい質問を出そうか、ちゃんと全部質問して帰らなくちゃ、と必死でした。

このやり方、一問一答式でたくさん質問がある場合は有効だと思います。

文字数が少ない原稿、例えば、情報誌の物や店の紹介でしたら、これで大丈夫かもしれません。

 

でも、これをすると話がぶつ切りになりますからね。

長めのインタビュー記事ではこのやり方は通用しません。文字数が埋まらなくなります。

話を適当に受け流しているわけですから、有効なリアクションや質問ができず、話をふくらませられないわけです。そうすると、踏み込みの甘い、底の浅い記事になってしまいます。

 

インタビュー記事を依頼されることが増えてから、私は頭を使いながら話を聴いて、話に乗っかることを心がけるようになりました。相手が言っていることを、一緒に考えながら聴くということです。

そうすると、疑問がわいてきたらすぐに質問できますし、「ここが大事」と思った部分に関してはさらに質問して、話を膨らませることもできます。

相手は思っていることを丁寧に話せて、私のほうはたっぷり話を聴かせてもらって疑問をクリアにできて、両者が気分よく取材を終えられるようになりました(と、私は思っています)。